近年、2022年に国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)にて昆明・モントリオール生物多様性枠組みが採択されるなど、生物多様性の損失を止め、回復へと導くネイチャーポジティブへの転換が世界的な関心事となっています。当社グループは、ネイチャーポジティブ実現へ貢献すべく、ネットポジティブアプローチを推進しています。
なお、当社グループでは事業が社会や環境へ与える影響深刻度が大きいことから、生物多様性をマテリアリティとして特定するとともに、TNFD提言に沿って依存・影響、リスク・機会の特定を進めています。詳細は、「TNFD提言への持続的な取組み」をご覧ください。
国内外のオペレーション事業では、当社グループの事業が生物多様性に対してもたらすリスクと影響を評価し、ミティゲーションヒエラルキーに基づき、リスクと影響の回避、低減、代償を通じて、生物多様性の保全に取り組んでいます。また、負の影響の低減だけでなく、森づくりなどの生物多様性に正の影響をもたらす活動にも取り組んでいます。たとえばオーストラリアにおいては、ジュゴンやクジラ類、その他脅威にさらされている海洋の「国家的環境重要事項※1」の保全管理、先住民により構成されたレンジャーの管理能力・維持を目的として、北部準州当局及びINPEX Australiaとの協働により、ララキアの人々をはじめとしたレンジャーが保全管理プログラムを主導、実施しています。
本特集記事では、日本国内における生物多様性の保全の取組みを抜粋して紹介します。
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※1オーストラリア連邦法などによって定められた国家的に重要な環境資産・環境価値。たとえば絶滅危惧種及び絶滅危惧生態系、世界遺産地域、国指定遺産、湿地、特定の水資源などがこれに含まれる
キツネ平どんぐりの森
長岡鉱場に隣接する新潟県長岡市不動沢では、2010年度から新潟県の「森づくりサポートプロジェクト」の一環で地域住民の方々とともに「キツネ平どんぐりの森づくり活動」を展開しています。2019年度からは、森づくり活動に加え、キツネ平どんぐりの森における生物多様性調査を実施し、森を利用し、生息している種について調査しています。2025年度には、昆虫類や植物を対象とした調査を実施しました。
森づくり活動
- 2010年度より、新潟県の「森づくりサポートプロジェクト」の一環で「キツネ平どんぐりの森プロジェクト」を展開。
- 2019年度には、これまでの森づくり活動に加えて、トライアルとして秋季に生物多様性調査を実施。
- 2019年度秋季調査で一定の成果が得られたことから、2022年度には、通年調査を実施。
- 2023年度には、森づくり活動参加者に対し、生物多様性調査結果について報告会を実施。
- 2024年度には、これまでの森づくり活動に加えて、環境DNA分析を実施。
- 2025年度には、陸上昆虫類及び植物を対象とした生物多様性調査を実施。
年に2回(春季・秋季)、地域住民の方々と一緒に森林整備、植樹活動、子ども向けの自然観察会を開催しています(2020年度以降新型コロナ感染症の影響で活動を休止、2024年度より活動を再開しています)。
2025年度には、継続的な森づくり活動に加え、子ども向けの環境教育としてキツネ平どんぐりの森に生息する昆虫の採集会や植物の観察会を実施しました。
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森づくり活動の様子
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環境教育の様子
2025年度生物多様性調査
これまでは哺乳類や鳥類を中心とした調査を行っていましたが、2025年度は陸上昆虫類や植物を対象に生物多様性調査を実施しました。文献調査に加えて、昆虫調査では網を用いて昆虫類を捕獲する任意調査及び目視調査が、植物調査では目視により植物種の記録が行われ、植生や植物相の調査が実施されました。
調査の結果、キツネ平どんぐりの森は樹木を好む昆虫類の生息場として良好な環境であることがわかりました。また、継続的な森づくり活動によって草地が維持されたことで、明るい草地環境を好む昆虫の生息・生育基盤が創出されたと考えられます。また、植物調査については、多様な樹木環境が確認された一方で、草地環境では複数の外来種が確認されたほか、セイタカアワダチソウやクズなどの単一的な種が優占する植生構造となっていることから、今後これらの種の繁茂が継続した場合に下層植生の単一化が進行し、生態系に影響を及ぼす可能性があることがわかりました。
本調査結果をもとに、2026年度以降の森づくり活動や除草作業を行う際は、調査で確認された外来種の積極的な除草や植生の単一化を防ぐための除草を実施するなど、活動内容をアップデートしていきます。
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昆虫類調査の様子
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植生調査の様子
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ヤマトアシナガバチ
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オオダイコンソウ
自然共生サイト
環境省は、2023年度より「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を「自然共生サイト」として認定する制度を開始しました。この制度は、2025年度から「地域生物多様性増進法」として施行され、法制化されています。また、2030年までに地球の陸域及び海域の30%の面積を保全することを目指す「30by30」目標達成に向けて、有志の企業・自治体・団体による「30by30アライアンス」も発足されています。
こうした枠組みのもと、「キツネ平どんぐりの森づくり活動」は、キツネ平どんぐりの森の豊かな生物多様性を維持・保全する活動であるとして2025年9月に「地域生物多様性増進法」に基づく認定を受け、また、認定活動の実施区域として「自然共生サイト」として登録されました。これに伴い、当社及び株式会社INPEX JAPANは「30by30アライアンス」へ参加登録を行いました。
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認定証
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自然共生サイト認定ロゴ
森づくり活動が生物多様性へもたらす影響の測定
本取組みでは、森づくり活動がキツネ平どんぐりの森の生物多様性保全にどの程度寄与しているかを分析・評価しました。キツネ平どんぐりの森は、新潟県内では希少な里山環境であり、山地・谷地・平野・河川が接するエコトーンに位置することから、生物多様性保全上重要な地域です。森林管理方針の違いが生物多様性(1メッシュあたりの平均種数など)に与える影響を比較したシナリオ分析の結果、適切な管理の継続・強化により、長期的な種数の維持・増加が見込まれる一方、管理の放棄や非維持では種数が減少する可能性が示されました。これにより、2010年度以降継続している森づくり活動が、同地域における生物多様性の保全に一定の効果を有することが確認されました。評価結果の詳細は、「森づくり活動が生物多様性へもたらす影響の測定」をご覧ください。
今後は、これらの結果を踏まえ、現行の管理を継続するとともに、多様な生息環境の創出などを通じて、より多くの生物群にポジティブな影響をもたらす森づくりを検討・実施していきます。
INPEX JAPANの森
株式会社INPEX JAPANでは、千葉県山武市蓮沼海岸において2025年度より「千葉県法人の森事業」に参加しています。本事業は、県有林において企業・団体などの法人が森林整備を行う取組みです。蓮沼海岸では、防風や津波といった局所災害の緩和を目的として、多くのクロマツが植栽され、海岸林として管理されています。一方で、潮害や病害虫により被害を受けている樹木も多く存在しています。
2025年秋には、第1回目の活動として当社社員12名がクロマツの苗木の植樹を実施しました。今後は継続的な植樹活動及び除草作業を行うことで、これに付随する生態系サービスの維持・向上に貢献していきます。
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植樹活動の様子
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クロマツ
森本取締役からのメッセージ
もとより、資源開発は自然改変を伴うものであり、生物多様性の保全にとりわけ重点的に取り組む必要があります。INPEXでは、生物多様性をマテリアリティとし、ネイチャーポジティブ実現に向けた、ネットポジティブアプローチの推進を掲げています。
また、その具体化のために定量目標を定め、全てのオペレーター事業での厳密な生物多様性評価、ミティゲーションヒエラルキーに基づいたプロジェクトも含めた生物多様性保全活動の確実な実施を進めています。
現在、すでに、国内外のオペレーター事業地域を中心に活動の幅を広げています。たとえば環境規制の厳しいオーストラリアにおいて、規制対応を越え主体的にララキアの人々との連携のもとに生物多様性保全に取り組んだり、国内で環境DNAを使った生物種の同定に取り組むなど、その幅広い活動を高く評価しています。
国内を見ると、人口減少・過疎化により広範な地域で生物多様性が劣化しています。生物多様性の保全と地域の活性化は不可分です。そういったなか、新潟県や千葉県などで事業を展開し総延長1,500㎞のパイプラインで広範な地域をカバーしているINPEXが、ネットポジティブアプローチの推進という目標のもとで、保全活動を進め地域の活性化と結び付けた豊かなストーリーを構成してほしいと考えます。
また、保全活動の実施にあたって社員のより幅広い参加を求め、全社挙げてのテーマとして定着を目指すことも持続性の観点から必要であり、そのような取組みを強化することを期待しています。