当社の水リスク管理に対する姿勢
当社グループの事業の実施に伴う水資源への影響及び地域社会における持続可能性への配慮は、当社が水管理を行うにあたっての基本的な考え方であり、水利用に伴う影響低減や価値創造の取組みを推進することを「水管理に係る基本的な考え方及びコミットメント」に定めています。当社はこの考えに基づき、各事業における水収支の算定や水リスクの評価を行い、リスクに応じた水管理を実行すべく目標の設定及び計画の策定に取り組んでいます。また、当社はIOGP及びIpiecaに加盟し、水使用量の削減、排水処理を含め、水管理に関する業界基準やベストプラクティスを取得しています。これらの枠組みで得たガイダンスや知見は、社内の運用・目標設定などに反映しています。
水リスクの評価及び水ストレスの高い地域の特定
当社は、WRI(World Resources Institute)が開発した水リスクのマッピングツールである「AQUEDUCT」を用いて、全オペレータープロジェクトが立地する地域の水リスクを毎年確認しています。確認する水リスクには、水資源への依存、事業が及ぼす影響、将来的な水需要や水質の変化、地域の規制や、社外ステークホルダーからの評判などが含まれます。また、2024年にはコミットメントの遵守、推進を一層図ることを目的に、全社的に測定可能な定量目標として、「水ストレスの高い地域における淡水取水ゼロの維持」を策定しています。2025年末時点で当社がオペレーターとして参画する石油・天然ガスプロジェクトは、生産中のプロジェクト5件と開発中のプロジェクト1件です。このうち、開発中のアバディLNGプロジェクトの実施エリアは水ストレスの高い地域となっています。このプロジェクトにおいては、海水淡水化装置を導入することで、淡水の取水は行わない計画となっています。従って2025年は、水ストレスの高い地域における淡水取水ゼロを達成しています。
地域の水リスクはさまざまな影響を受け、時間とともに変化することから、今後も継続して定期的に水リスクの確認を行い、高い水リスクが確認される場合には、ミティゲーション・ヒエラルキーに基づき、追加的な対策を計画・実行します。
AQUEDUCTを使用して評価される水リスク問題のリスト
| 種類 | 指標の名称 | 説明 |
|---|---|---|
| 物理リスク(量) | WS | 水使用に伴う水ストレス |
| WD | 枯渇リスク | |
| IAV | 水供給の年次変動リスク | |
| SEV | 水供給の季節変動リスク | |
| GTD | 地下水面の低下リスク | |
| RFR | 河川の洪水リスク | |
| CFR | 沿岸の洪水リスク | |
| DRR | 干ばつリスク | |
| 物理リスク(質) | UCW | 未処理排水の流出リスク |
| CEP | 沿岸水域の富栄養化リスク | |
| 規制・評判リスク | UDW | 飲料水の確保リスク |
| USA | 衛生リスク | |
| RRI | ESG評価リスク |
国内の2024年度リスク評価結果と2030年予測のリスクマップ
効率的な水利用に資する取組み
各オペレータープロジェクトにおける水利用状況の確認と改善を目的とした水のマテリアルバランス調査の結果をもとに、各施設・プロセスごとの詳細な水利用状況の把握・分析を行い、これらの結果も反映しながら、各プロジェクトにおいて継続的な水の消費量削減や廃水の質の向上を目指しています。また、企業全体においては適切な水利用を含め、環境管理に関する取組みをINPEX Vision 2035、年度計画に落とし込み、全社的な環境管理を推進しています。詳しくは「ガバナンスと戦略」をご覧ください。当社の水リスクに関する財務情報は、「データ集」をご覧ください。
淡水の効率的な利用に向けた取組み
水資源のなかでも、淡水の取水管理は当社の水管理における主要課題であると認識しています。国内外のオペレータープロジェクトでは、取水量及び石油・天然ガスに随伴する産出水の排出を管理し、水資源への影響を低減する取組みを実施しています。当社のオペレータープロジェクトでは、淡水(上水、工業用水、地下水)を主に冷却、発電、及び掘削作業といった用途に使用しています。2025年度は、当社全体で約1,373千㎥の淡水を取水しました。
淡水取水量推移(国内・海外)
単位:千 ㎥また、国内においては、通常の冷却、掘削作業といった用途のほか、冬季の消雪散水などのためにも地下水を使用します。淡水使用量の削減のため、冷却水の循環利用や消雪散水設備への自動発停装置の導入などに努めています。
イクシスLNGプロジェクトにおいては、水使用量削減に向けてLNG基地内の施設における淡水使用量の調査を実施し、プロセスからの処理廃水及び発電施設からの廃水蒸気水などの再利用の可否について、費用対効果を勘案し検討を進めています。
海水の効率的な利用に向けた取組み
イクシスLNGプロジェクトの海上生産施設では、冷却水として、また、直江津LNG基地では気化器における熱交換のために、淡水の代わりに海水を利用しています。これらの拠点で利用される海水は、取水温と排水温の温度差や残留塩素濃度などに関する操業国の法令や国際的なガイドラインの基準を満たしていることを確認した上で、海域に排水しています。
産出水の排水管理
石油・天然ガスの生産操業に伴い発生する随伴水は、地下に還元圧入または事業を実施する国及び国際的なガイドラインの排水基準を満たすことを確認した上で、排水しています。2025年度に発生した総随伴水量約81万㎥のうち、33%は還元圧入し、残りは適切な処理を行った後、河川または海へ排水しました。
産出水排水量推移(圧入・排水)
単位:千 ㎥生産水(随伴水)の適切な処理・管理
各オペレータープロジェクトにおける生産水は、健全性の保たれた圧入井への圧入・地下還元、もしくは水処理システムによってそれぞれの国・地域の法令などにより定められた基準値を満足した上で、河川や海域に放出しています。海洋への生産水の放出においては、従来の分散している油分のみを対象とした規制のみにとどまらず、溶解している炭化水素成分も含んだ規制値を採用する国・地域も散見されます。イクシスLNGプロジェクトの操業においては、MPPE(マクロポーラスポリマー抽出)による3次高度処理システムも採用し、溶解性炭化水素類も除去した上で、基準値を満足した生産水を海域に放出しています。